テレビ業界の裁量労働制

厚労省が作ったとんでもない資料のために安倍内閣が推し進めてきた「働き方改革関連法案」の中の「裁量労働制」の対象拡大が全面的に削除になりました。

裁量労働制には「専門業務型」と「企画業務型」があり、今回、対象を拡大しようとしていたのは、企画業務型。

私は長年にわたりテレビのフリーのディレクターとして専門業務型の仕事をしてきましたが、今の労働基準法では、どちらの型も裁量労働制に問題があると感じています。

テレビ業界には契約社員がたくさんいて、最近は更に増える傾向にあります。それなのに、契約書を取り交わすことは殆どありません。

私の友人で、英語と日本がバイリンガルの日本人ディレクターがいて、私が契約してたプロダクションに入ってきたことがあります。彼は、まだ駆出しだったので給料は非常に安いものの、番組を作ってスキルを磨きたいと思っていました。

ところが、会社で与えられる仕事は翻訳ばかり。翻訳の会社に頼むとかなり高いので、最初から翻訳をさせるために採用したに違いありません。結局、1本の番組も作らずに辞めていきました。

テレビ業界の契約社員は、AD(アシスタントディレクター)も、ディレクターとして雇用されていることがほとんどです。ディレクター、それもテレビ局員や、外部でもある程度のベテランであれば自分のペースで仕事をすることが出来るので、裁量労働制も分かります。

しかし、ADは「明朝◯時までに打合せの準備をしておけ」とか「収録の後片付けをしてから帰れ」など、上から押し付けられるばかりで、時間もまったく自由になりません。

それを裁量労働制で雇用できてしまう今の法律はどうなのでしょうか?

そうした中で自分を守るにはどうしたらいいのか?

私は、専門業務型、企画業務型どちらであっても、裁量労働制で働くものは経営者と対等である、という意識を持つことが必要だと思っています。

次に、最近になって私がようやく出来るようになった働き方を書いてみたいと思います。

① 出来ないことは出来ないとはっきり言う。

当たり前のことですが、企業というのは、利益を上げるための組織です。そして、低成長に入った今の世の中で(特にテレビ業界は)利益を上げて経営者の給料を維持するためには経費の削減が重要です。経費の中には人件費も含まれますが、給料を下げるといろいろと問題になってしまいます。それでも経費を削減するにはどうするか?それは、労働者により多くの仕事をさせることです。甘い顔をしていたら、どんどん仕事を押し付けてくるのが経営者というものです。

② 「〇〇のためだから」に騙されるな。

テレビの仕事をしていて無理な仕事押し付けられるとき、よく耳にするのが「良い番組を作るためには仕方ないだろう」という言葉です。もちろん番組スタッフとして良い番組を作りたいのは当然です。その気持を悪用して仕事を押し付けてくるのです。まあ、良い番組なら視聴率が上がり局は儲かり、制作会社やディレクターなら少しは評価されて次の仕事につながるかもしれません。しかし、ADは何の得にもなりません。

③ クオリティを落とせ

与えられた仕事量に対して報酬が少ないと思ったときは、躊躇なくクオリティを落とすことを勧めます。誰しもできるだけ良いものをできるだけ安く手に入れたいと思うのは当然のことです。それは、企業の経営者もかわりません。カローラの値段で、最新型のベンツが手に入ったら貴方もラッキーと思うでしょう。カローラの値段を提示されたら、カローラを出しましょう。

④ リスクは経営者の方が高い

ここまで読んで、そんなことを言われても、と思う人もいるかも知れません。しかし、考えてみてください。負っているリスクは、労働者より経営者の方が重いのです。もし、あなたが休んで番組が完成できず放送に穴を開けてしまったら。納期が遅れてしまったら。とれるはずの契約が取れなかったら。店の営業ができなくなってしまったら。労働者は皆、仕事をしない、という切り札を持っているのです。

これでいいのかな?

テレビ業界で働くフリーのディレクターです。だから何?ときかれても困りますが、気の向いたときに、世迷い言を書いています。

0コメント

  • 1000 / 1000